● 看護中の疑問や壁を感じたことから
認定看護師や専門看護師の資格を得て、全国で活躍している人が急激に増加し、2012年には認定看護師が一万人、専門看護師が一千人規模になりました。それぞれの病院で専門的なケアの指導員としてほかの看護師の教育指導に携わったり、患者さんや家族、看護師と医師、それぞれの仲介役としてより良い看護の実現のために大活躍なさっています。
認定看護師や専門看護師が増加し続けているのには理由があります。医療が高度化し困難な手術や治療を受けて延命る方が増えましたが、それに伴って日常生活を送る上でより困難で複雑な事情を抱える患者さんが急増しているからです。そのような方の看護のためには、医師だけではなく看護師に対してもより高度で専門的な知識や技術が必要になっています。そのため、より自分の専門性を高めようとスキルアップに励む看護師が増加しているのです。
さて、認定看護師や専門看護師になった人は、初めから特別な人だったでしょうか。なりたいと思って看護師になったのではなく、目の前の患者さんを救いたい。そのためにはもっと勉強する必要があると気づき、学び続けた結果得られた資格です。
スタートはみんな同じです。目の前の患者さんをいかに観察し、自分で生涯突き詰めていきたいテーマを決め、それに向かってまい進してきたこと。その努力と成果が評価されたわけです。
認定看護師や専門看護師の方々が何をきっかけにそれぞれの道を目指すことになったのでしょうか。そのきっかけをいくつかご紹介します。
● 認定看護師とは
認定看護師は、ある特定の看護の分野で優れた技術と知識を持っていると日本看護協会からみとめられた人のことを言います。
認定される分野は、救急看護・皮膚排泄ケア・集中ケア・緩和ケア・がん化学療法看護・感染看護・訪問看護等、20近い分野が誕生しています。
認定看護師は、自分自身が高度で専門的な知識と技術を持っているだけではなく、周囲の看護師に専門的な分野について指導したり、看護師や医師、患者や家族それぞれの人間関係をつなぎ、しいては地域の医療活動にまで広め、学びあうリーダーとしての活躍も期待されています。
● 認定看護師を目指したきっかけは
~皮膚・排泄ケア看護認定看護師を目指したわけ Mさん~
私が皮膚・排泄ケアの認定看護師を目指したのは、受け持ちの患者さんがストーマ手術を受けたのがきっかけとなりました。自分の未熟さに改めて気づき、患者さんのためにもっと深く専門的知識や技術を学びたいと思い、半年間休みをもらって大学院へ通い、皮膚・排泄ケアのための勉強をしました。
皮膚・排泄ケアとは、人工肛門を手術でつけてもらったとき、排泄物を体の外に取り付ける特殊な袋で受け止めることになります。それらを取り外したりする方法や、清潔を保つためスキンケアを行う方法等、患者さんが自分自身でできるようになるまで指導支援をしたり、精神的なケアも行っていく必要があります。患者さんがこんな事情を抱えていても、より人間らしい日常生活ができるようケア・サポートしていく仕事です。
そのほかには、蓐瘡ケア・失禁の予防や皮膚トラブルのケアなども行っていきます。
仕事は、通常の病棟での仕事だけでなく、入院患者さんのスキンケア、アセスメントも行います。外来の患者さんのために週一のスキンケア外来を行ったり、蓐瘡回診、フットケア等様々なサポートをしています。
自分が中心になってケア・指導を行うだけではなく、患者さんや担当看護師、家族など多くの皆さんから、どうやったらにおいを強く感じないか、見た目をすっきりと整えることができるか、かゆくならないようにどう工夫したらいいのかなど、実体験に基づくノウハウを学ぶ場合もとても多いです。それらの情報も研究に役立てさらに良い看護の実践のために生かしています。
● 専門看護師とは
専門看護師とは、医療の発展に伴い、より困難で複雑な事情を抱える患者さんをケアするために、優れた知識と技術を持っていると日本看護協会から認められた方々のことを言います。
認定看護師に似ていますが、専門看護師はほかの看護師や医療福祉にかかわる人々や患者・家族、行政等、様々な人々との協力体制を構築し、患者さんのケアに当たります。自身が質の高く高度な看護を実践するだけでなく、より良い看護の実現のために、相談・調整・倫理調整・教育・研究の6つの役割を果たすことを期待されています。つまり、看護システムの構築やマネジメント、研究と幅広い活躍が期待されています。
● 専門看護師を目指したきっかけ
~がん看護の専門看護師を目指して Aさん~
がん看護の専門看護師を目指したいと強く思ったのは、病棟勤務6年目の時でした。がんの末期症状で苦しむ患者さんや、がんを抱えながらも働きたい、日常生活を家族と共にできるだけすごしたいと願う患者さんを目の前にして、がん患者さん特有の副作用や症状のコントロール、患者さんとその家族の心のケアやサポートについてより深く学びたいと思いました。
大学で先生方や仲間と学ぶうちに、自分が学んだことを生かし、さらに研究を推し進めていくためには、臨床で働く看護師や患者さんに直接働きかけることができる環境、実践の場で周囲を教育することが必要と強く感じました。
Aさんは、現在専門看護師の資格を取るために勉強中です。資格を取るまで活動を待つのではなく、勉強中でもがん看護のための実践や周囲の看護師の教育や、相談に乗る。患者さんのケアを通して、現場で研究を推進。これらの活動をこなしています。
資格を取ることが目標ではなく、自分がより良いがん看護のためにすでに実践していることが大切といいます。
現在はがんのため心身の痛みの緩和ケアが必要な患者さんのケアを中心に、よりよいケアの実現のために医師や看護スタッフ、家族を含めたより良いケアのための勉強会を開いたり、周囲の看護師のがん看護に関する専門性を高めるため、臨床で活躍を続けています。
看護師の求人はたくさんあります。そこから自分がどうしていくかが大切になってきますね。