患者と看護師の関係

うつ病で入院をしました。といっても、病状がひどかったわけではなく、環境を変えたいという理由だけで、自分からすすんで入院しました。保養所みたいな感覚です。
介護施設も併設された、少し大きめの病院で、たくさんのスタッフさんがおられました。
ある朝、年配看護師さんの大きな声で目が覚めました。「今日は屋久島が見えるよー!これが見えると、いい1日になるよー!」そういって、部屋のカーテンを開けていかれました。入院先は枕崎で、海のすぐそばだったんです。それで、窓から、看護師さんの指差す方向に目を向けてみると、確かにうっすら、島が見えました。「へええ、こんなところから屋久島が見えるんですねえ!」と感動しきり。入院中だけど、今日は何か良いことがあるかな、と、それだけのことで少し楽しい気分になりました。少し入院が長引いて、毎朝確認するのが日課になりましたが、屋久島が見えたのはその日だけで、その後、見えたことはありませんでした。
その年配看護師さんはちゃきちゃきした方で、私の担当ではありませんでしたが、よく部屋に寄って声をかけてくれました。
「実家に帰ると、家族に気を使って疲れるんです」という話をした時には「私も疲れるよー。今はダンナしかいないけど、家族でも気を使うよねえ」と共感してくださったり。
毎朝の体調測定にもよく来てくださって、短いよもやま話をしながら、リラックスして測定することができました。看護師さんによって、血圧や脈拍、体温を測定するのに緊張したりリラックスしたりします。いろんなタイプの方がいます。余計な会話は一切せずに測定に専念する人や、おもしろい話をして笑わせてくれる人、新米で緊張してる人、効率重視でちゃっちゃと手際よくされる人。それによって、私の血圧や脈拍も違うんじゃないかと思うくらい気分が左右されましたが、実際には血圧にも脈拍にも影響ありませんでした。
若い人だと、その日の気分で顔色や態度が違ったりします。顔が疲れてたので、こっちが心配になって「だいじょうぶですか」と若い女性看護師さんに話しかけたら、「いやあ、鹿児島市内で遅くまで遊んできちゃいまして。今日はだるいでーす。」と正直に話される方もいました。心を開いてくれてる感じがしたので、嫌な気分にはなりませんでした。
患者と看護師。上下関係のようなものはなく、適度に距離を保ちながら家族のように接してくださったので、居心地の良い病院でした。